いわたふじんのしをいたむ
岩田夫人の死を悼む

冒頭文

本誌の読者は「夫婦百景」の筆者獅子文六が、同時に岩田豊雄であることぐらいはご承知であろう。その夫人静子(しずこ)さんが、急な病いで亡くなられた。四十四歳といえば、まだ人生を終るには早く、夫君が今後ますます多くの傑作を書かねばならぬように、夫人もまた、将来にさまざまな期待と希望とを抱いて、この春を迎えようとしていたにちがいない。 私は岩田君ともつとも親しい友人の一人として、この不幸を正視す

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人倶楽部 第三十一巻第六号」1950(昭和25)年6月1日

底本

  • 岸田國士全集28
  • 岩波書店
  • 1992(平成4)年6月17日