やしろせいいちくんをおす
矢代静一君を推す

冒頭文

矢代君の戯曲は以前二つほど読んでゐた。それに今度文学座のアトリエ公演でこの、たしか第三作である「城館(しろ)」を観て、この作者もいよいよこんなものを書きだしたな、と思つた。といふ意味は、前の二作だけではまだまだ、劇作家矢代静一の特色も真価もはつきりしなかつたからである。 今度の「城館(しろ)」は、非常に新鮮で彼の豊かな才能の開花がはじめて告げ知らされたやうな気がした。 私は日本

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新劇 第一巻第一号」1954(昭和29)年4月1日

底本

  • 岸田國士全集28
  • 岩波書店
  • 1992(平成4)年6月17日