「せいかつとぶんか」じょ |
「生活と文化」序 |
冒頭文
「文化」といふ言葉に、私は少し食傷しはじめた。こんな生な言葉を仕事のやうに使つてゐると、空恐しくなる。日本国民の心あるものは、従来の指導者たちの精神的貧困に対し、暗黙の抗議をし続けて来た、その結果が「文化」といふ合言葉の氾濫になつて現はれたものと私は解したい。ところが、翻つて、抗議する側の、同じことを同じ調子で繰りかへす半身不随の症状にも、大に警戒しなければならぬ。 「文化人」と称せられる「文化
文字遣い
新字旧仮名
初出
「生活と文化」青山出版社、1941(昭和16)年12月20日
底本
- 岸田國士全集28
- 岩波書店
- 1992(平成4)年6月17日