ラジオぶんがくのしゅうかく――「なだれ」 |
ラヂオ文学の収穫――「なだれ」 |
冒頭文
真船豊氏のラヂオ・ドラマ集を一読して感じたことは、いはゆる「ラヂオ・ドラマ」の形式としての目立つた新工夫がない代り、飽くまでも戯曲の定石を踏んで、しかもラヂオ的な効果をねらつた独得の計算が行はれてゐるといふことである。 元来、戯曲家としての氏の才能は、現実的な物の捉へ方にあるのである。興味の対象となつた人間の生活の一場面は、正確な日常的の観察と稀に見る執拗な粘着力によつて極めて躍如たる風
文字遣い
新字旧仮名
初出
「東京日日新聞」1938(昭和13)年4月27日
底本
- 岸田國士全集28
- 岩波書店
- 1992(平成4)年6月17日