『ばいえん』のじょ |
『煤煙』の序 |
冒頭文
「煤煙(ばいえん)」が朝日新聞に出て有名になつてから後(のち)間もなくの話であるが、著者は夫(それ)を単行本として再び世間に公けにする計画をした。書肆(しよし)も無論賛成で既に印刷に回して活字に組み込まうと迄(まで)した位である。所が其頃(そのころ)内閣が変つて、著書の検閲が急に八釜敷(やかまし)くなつたので、書肆は万一を慮(おもんぱか)つて、直接に警保局長の意見を確めに行つた。すると警保局長は全
文字遣い
新字旧仮名
初出
「東京朝日新聞 文芸欄」1909(明治42)年11月25日
底本
- 漱石全集 第十六巻
- 岩波書店
- 1995(平成7)年4月19日