モノロオグ
モノロオグ

冒頭文

花茣蓙を敷きつめた八畳の日本間、寝台、鏡戸棚、テーブル、椅子等、すべて安物の西洋家具。寝台には、掛蒲団がなく、マトラスだけになつてゐるところ、テーブルの上に椅子が一脚、逆(さか)さまに載せてあるところ、この部屋が、今誰にも使はれてゐないことを示してゐる。 装飾と云へば、壁に、新聞の新年附録らしい美人画が、鋲で留めてあるきりで、そのほか、何か「歴史的な」ものを求めれば、柱の一本に、四月十七日の日附

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸春秋 第十年第六号」1932(昭和7)年6月1日

底本

  • 岸田國士全集5
  • 岩波書店
  • 1991(平成3)年1月9日