にょにんかつごう |
女人渇仰 |
冒頭文
舞台は黒幕の前、左手と右手にそれぞれ室内を暗示する簡単な装置。中央は街路。照明の転換によつて、この三つの部分が順々に利用される。 最初は、中央の街路上に二つの人影。 老人 ひとりつきりになつたね。 少女 おぢいさんは、さつきから、なにしてるの? 老人 なんにもしてない。歩いてゐるだけだ。お前が、そこに立つてるのとおなじさ。 少女 あたしたちは、たゞ立つてるだけぢやない
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文学界 第三巻第七号」1949(昭和24)年9月1日
底本
- 岸田國士全集7
- 岩波書店
- 1992(平成3)年2月7日