みちとおからん よんまく ――または あまのじょおうはこうしてえらばれた――
道遠からん 四幕 ――または 海女の女王はかうして選ばれた――

冒頭文

原始の面影をそのまゝ伝へたやうなところと、近代の文明が到りついたところとを、あらゆる点で混ぜ合せた、ある時代の、ある地方の漁村である。 女性によつて社会及び家庭生活の主導権が握られてゐるために生じた風俗の転倒がみられるほか、人間の思想にも心理にも、その未来像らしいものは少しも示されてゐない。両性はそれぞれ、両性にふさはしい習慣のいくらかを失つてゐるかもしれないが、それにも拘はらず、男は男、女は女

文字遣い

新字旧仮名

初出

「人間 第五巻第六号」1950(昭和25)年6月1日

底本

  • 岸田國士全集7
  • 岩波書店
  • 1992(平成3)年2月7日