しゃせいちょうのおもいで |
写生帖の思ひ出 |
冒頭文
いつからとなく描きためかきためした写生帖が、今は何百冊と云ふ数に上つてゐる。一冊の写生帖には、雑然として写生も縮図も前後なく描き込んである。が、さうしたものを時折繰りひろげてみると、思ひ掛けもない写生や縮図が見付かつて、忘れた昔を思ひ出したり、褪(さ)め掛けた記憶を新にしたりする事がある。私の為めには、古い新しい写生帖が懐かしい絵日記となつて居る。 私の絵日記の一番古いのは十三位の幼い頃
文字遣い
新字旧仮名
初出
「絵と随筆」塔影社、1932(昭和7)年
底本
- 青眉抄その後
- 求龍堂
- 1986(昭和61)年1月15日