ふるいきおくをたどって |
旧い記憶を辿つて |
冒頭文
その頃の絵は、今日のやうに濃彩のものがなくて、何れもうすいものでした。恰度(ちやうど)春挙(しゆんきよ)さんの海浜に童子の居る絵の出たころです。そのころは、それで普通のやうにおもつてゐたのでした。今日のは、何だか、そのころからみるとずつと絵がごつくなつてゐるとおもひます。 法塵一掃は墨絵で、坊さんの顔などは、うすいタイシヤで描かれてゐました。尤も顔の仕上げばかりではなしに、一体にうすい絵
文字遣い
新字旧仮名
初出
「都市と藝術 240号」1934(昭和9)年
底本
- 青眉抄その後
- 求龍堂
- 1986(昭和61)年1月15日