かんせいじだいのむすめのうりょうふうぞく
寛政時代の娘納涼風俗

冒頭文

月蝕は今迄余り多く描かれて居りませんから一度描いてみたいと胸に浮びましたのが動機です。 あの画は寛政の頃の良家の娘さんの風俗で夏の宵広い庭に降り立って涼を納(い)れて居ります時に「今夜は月蝕だわ……」とふと思い付いて最も見易いように鏡を持ち出して写し取っている所です。空を仰いで眺めているのでは落ち着きがなくて如何にも軽くなりますので、ああして俯向きがちの所を描きましたが、余り夜深になりま

文字遣い

新字新仮名

初出

「京都日出新聞」1916(大正5)年10月24日

底本

  • 青帛の仙女
  • 同朋舎出版
  • 1996(平成8)年4月5日