一 ある高原の避暑地。落葉松(からまつ)の森を背にしたテニスコートの傍(かたは)ら。日が落ちて、橙色の雲の一塊が、雪をいたゞいた遠い峰を覆つてゐる。今テニスを終つたばかりの四人、そのうちの女二人は境笛子と母の杉江である。そして、二人の青年は、金津朔郎と酒巻深である。 酒巻 明日は敵(かたき)を打ちませうね。笛子(ふえこ)さん。 笛子 明日は組を変へるんだわ。 杉江