男甲に扮する俳優 女乙に扮する女優 舞台は神戸のあるホテルの休憩室 男と女とが茶卓を挟んで向ひ合つてゐる。 男 (煙草の煙を大きく吐き) たうとう日が暮れました。 あの船では、もう夕食の鐘を鳴らしてゐるでせう。 瀬戸内海の島々に灯が点く頃 日本を離れる人たちの胸は 一斉に締めつけられるのです。 女 (遠くを見つめながら)