さっこんよこはまいぶん(ひとまく)
昨今横浜異聞(一幕)

冒頭文

人物 田代三夫 同ぬい子 劉鯤 瑩芳 舞台は、横浜郊外にある田代三夫の家の応接間。 外人の設計になる瀟洒なヴィラを、特別の事情で安く借り受け、愛妻ぬい子と二人きりで、結婚後三年の今日、まだ蜜月の生活を楽しんでゐる田代は、永く海外で暮した結果、何処か日本人離れのした神経の鈍さと、それを補ふ感情の濃やかさがある。 細君のぬい子は、生粋の横浜ツ子で、両親は、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「朝日 第三巻第一号」1931(昭和6)年1月1日

底本

  • 岸田國士全集4
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年9月10日