いのちをもてあそぶおとこふたり(ひとまく) |
命を弄ぶ男ふたり(一幕) |
冒頭文
人物 眼鏡をかけた男 繃帯をした男 鉄道線路の土手——その下が、材木の置場らしい僅かの空地、黒く湿つた土の、ところどころに、踏み躙られた雑草。 遠くに、シグナルの赤い灯。 どこかに、月が出てゐるのだらう。 眼鏡をかけた男——二十四五ぐらゐに見える——が、ぽつねんと、材木に腰をかけてゐる。考へ込む。 溜息をつく、洟をかむ。眼鏡を外して拭く。髪の毛をむしる
文字遣い
新字旧仮名
初出
「新小説 第三十巻第二号」1925(大正14)年2月1日
底本
- 岸田國士全集1
- 岩波書店
- 1989(平成元)年11月8日