はざくら(ひとまく)
葉桜(一幕)

冒頭文

人物 母 娘 時  四月下旬の真昼 所  母の居間——六畳 開け放された正面の丸窓から、葉桜の枝が覗いてゐる。 母は、縫ひものをしてゐる。 娘は、その傍らで、雑誌の頁を繰つてゐる。 ——間。 娘  (顔をあげ、無邪気らしく)あたし、どうでもいゝわ。 母  (わざと素気なく)母さんもどうでもいゝ。(間)どうでもいゝことはないよ。(間

文字遣い

新字旧仮名

初出

「女性 第九巻第四号」1924(大正14)年4月1日

底本

  • 岸田國士全集1
  • 岩波書店
  • 1989(平成元)年11月8日