人物 母 娘 時 四月下旬の真昼 所 母の居間——六畳 開け放された正面の丸窓から、葉桜の枝が覗いてゐる。 母は、縫ひものをしてゐる。 娘は、その傍らで、雑誌の頁を繰つてゐる。 ——間。 娘 (顔をあげ、無邪気らしく)あたし、どうでもいゝわ。 母 (わざと素気なく)母さんもどうでもいゝ。(間)どうでもいゝことはないよ。(間