あるおやこのもんどう(ひとまく) |
ある親子の問答(一幕) |
冒頭文
山上のホテル——食堂のベランダ、夏のをはり——午後九時頃。 テーブルに、青年とその母が向ひ合つてゐる。 青年 もうおやすみになつたら如何です。だいぶん冷えて来ました。 母 こんなに晴れた空を見るのは久しぶりだね。——寝るのが惜しいやうだ。 青年 僕は少し考へごとがあるんですから、しばらく一人きりにして下さい。——お部屋からでも空は見えるでせう。 母 そんなにいつまでも空を
文字遣い
新字旧仮名
初出
「週刊朝日 第十三巻第三号」1928(昭和3)年1月8日
底本
- 岸田國士全集3
- 岩波書店
- 1990(平成2)年5月8日