人物 周蔵 周一 兼子 美代 医師 宮下 東京の裏町——周蔵一家の住居 座敷に通ずる茶の間 座敷は周蔵の病室になつてゐる。屏風の陰から時々、力のない咳が聞える。 兼子 (茶の間で火をおこしながら)又、お咳が出ますね。今すぐお薬をあげますから、独りでお起きになつちやいけませんよ。 周蔵 …………。 兼子 急ぐ時には、ほんとに困つち