人物 宇治少佐 従卒太田 馬丁友吉 少佐夫人鈴子 友吉妻数代 女中よし 時 明治三十七年の夏 所 東京 第一幕 宇治少佐の居間——夕刻 従卒太田(騎兵一等卒)が軍用鞄の整理をしてゐる。 鈴子夫人が現れる。 夫人 さ、此の毛糸のチヨツキをどこかへ入れといて頂戴。——あとから送つてもいゝけれど、どさくさ紛れに失くな