えいじつしょうひん |
永日小品 |
冒頭文
元日 雑煮(ぞうに)を食って、書斎に引き取ると、しばらくして三四人来た。いずれも若い男である。そのうちの一人がフロックを着ている。着なれないせいか、メルトンに対して妙に遠慮する傾(かたむ)きがある。あとのものは皆和服で、かつ不断着(ふだんぎ)のままだからとんと正月らしくない。この連中がフロックを眺めて、やあ——やあと一ツずつ云った。みんな驚いた証拠(しょうこ)である。自分も一番あとで、や
文字遣い
新字新仮名
初出
1909(明治42)年1~3月
底本
- 夏目漱石全集10
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1988(昭和63)年7月26日