もん

冒頭文

一 宗助(そうすけ)は先刻(さっき)から縁側(えんがわ)へ坐蒲団(ざぶとん)を持ち出して、日当りの好さそうな所へ気楽に胡坐(あぐら)をかいて見たが、やがて手に持っている雑誌を放り出すと共に、ごろりと横になった。秋日和(あきびより)と名のつくほどの上天気なので、往来を行く人の下駄(げた)の響が、静かな町だけに、朗らかに聞えて来る。肱枕(ひじまくら)をして軒から上を見上げると、奇麗(きれい)な空

文字遣い

新字新仮名

初出

「朝日新聞」1910(明治43)年3~6月

底本

  • 夏目漱石全集6
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年3月29日