おもいだすことなど |
思い出す事など |
冒頭文
一 ようやくの事でまた病院まで帰って来た。思い出すとここで暑い朝夕(あさゆう)を送ったのももう三カ月の昔になる。その頃(ころ)は二階の廂(ひさし)から六尺に余るほどの長い葭簀(よしず)を日除(ひよけ)に差し出して、熱(ほて)りの強い縁側(えんがわ)を幾分(いくぶん)か暗くしてあった。その縁側に是公(ぜこう)から貰った楓(かえで)の盆栽(ぼんさい)と、時々人の見舞に持って来てくれる草花など
文字遣い
新字新仮名
初出
「朝日新聞」1910(明治43)年10月~1911(明治44)年4月
底本
- 夏目漱石全集7
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1988(昭和63)年4月26日